連日報道される熊にまつわるニュース。
中には痛ましい内容のものもあり、見聞きするのも辛くなりますよね。
しかも、出没場所も山の中だけに限らなくなっているのだそうです。
そこでふと疑問が湧きます。
毎年熊の被害のニュースがあるのはあるだろうけど、2025年の今年は特に多くないか?ってことです。
では、こんなにも熊の被害が多くなっているのはなぜなのでしょうか?
熊の被害が増えている理由について改めて調べてみることにしました。
また、熊に遭遇してしまった時の対処方法や、事前にしておいた方が良いことについても触れていきます。

目次
熊の被害が多い県は?
熊の出没が最も多い県、つまり被害が多いのは次の通りです。
- 岩手県
- 秋田県
- 青森県
- 山形県
「あれ?熊といえば北海道も多いのでは?」
とお思いの方もいるかと思いますが、北海道は出没件数を公にしていないそうです。
もしかすると、1番多い可能性もあります。
それにしても熊の被害が連日報道される2025年秋は死亡事故も起こっています。
しかも熊に出くわしているのが山の中だけじゃない上に、過去最多となると他人事じゃ済まされません。
事実、2025年の熊の出没件数は過去5年間で最多だとニュースでも報じられていますよね。
年度上半期(4~9月)の出没件数は2万792件(速報値)で、過去5年間で最多となるなど、深刻な状況が改めて浮き彫りに
引用元:朝日新聞 クマ出没は上半期で2万件、過去5年間で最多 「過去最悪」の被害
そして熊関連での死亡事故は2025年11月6日時点で過去最悪の13名。
熊の出没場所の変化が関係しているようですが、どういうことなのでしょうか?
その熊の被害が増えた理由にもなっている”出没場所”の変化について触れていきます。
熊の被害が増えた理由〜出没場所の変化について
熊の被害が例年よりも多くなっている大きな理由はまさに「熊が生息する場所が変わってきている」から。
では、熊の出没場所の変化はなぜ起こってしまったのでしょうか?
それにはいくつかの理由がありました。
- 餌不足
- 里山の過疎化
- 熊の天敵の絶滅
- クマの脅威的な増殖
では、これらの理由について1つずつ解説していきます。
餌不足
熊は秋に餌をたくさん食べ、体に脂肪を蓄え冬眠に備えます。
しかし、熊の餌となるドングリの凶作だった今年は、餌不足で熊が里山から行動範囲を広げている可能性があると言われているのです。
今年はブナなどのドングリ類の凶作が広範囲で起きており、山中のエサ不足が出没増加を後押ししています。これら複数の要因が重なり、クマが人里に入り込む事例が頻発している
引用元:weathernews 近年、クマ被害が急増している理由 気候変動による影響は?

里山の過疎化
熊は奥山で、人は人里でと切り分けられ生活してきたかつての時代。
そしてその間にある”里山”の近年の環境の変化が熊の出没数を増やしているといわれています。
例えば、昔里山では農業が人力に頼ったものだったこともあり、山に近い畑にも人の出入りが多くありました。
犬も放し飼いにされ、奥山と人里の間にある里山にでさえも熊が近づくことはあまりなかったのです。
しかし現代では農業の機械化が進み畑に出る人は激減。
また里山の過疎化や高齢化により放置されるようになった耕作物(柿や栗)や空き家の存在が、熊と人それぞれの生活圏ラインをうやむやにしてきたのです。
その結果、里山まで来るようになった熊はその近くにある人里へも出没するようになってしまったということです。
熊の天敵の絶滅?
熊の天敵がいなくなったことにより、熊が増えたという理由があります。
では、熊の天敵って何だったのでしょうか?
熊の天敵は国やその地域によって変わってくるそうですが、日本で言えばオオカミが熊と敵対的な関係にあったようです。
しかし、狼は人間による乱獲や駆除で絶滅。
一方の熊は、乱獲及び駆除されてきた時代も生き延び、気づけば天敵のいない世代になっていました。
熊を襲う狼がいなくなることで、次第にその個体数を増やしていったのではないかという説です。
クマの脅威的な増殖
そもそも熊は、繁殖力の低い動物だと思われていました。
一方で近年では地域によって違うものの確実にその個体数が増加しているのはなぜなのでしょうか。
実は兵庫県のデータからは、鹿と同等まではいかないものもそれに匹敵するほどの増加力を熊は持っていることが判明しています。
かつては”絶滅品種”として保護管理されてきたツキノワグマも、東日本では個体数が復活。
今では、増加しすぎた分を捕獲する管理へと切り替えているほどです。
狩猟者の減少は関係ない?
最近の熊被害の多さは時に「狩猟者の減少が理由ではないか」と言われることもあります。
ところが実際は、狩猟者の減少は熊の被害の多さには直接関係はないとのこと。
環境省の統計を見るとわかりますが、H20年度からH30年度までの熊などの捕獲殺数は約1000から多くて3000頭ほどです。
しかし令和に入るとその数はぐんとあがり、R5年度で過去最悪7677頭が捕殺されています。
つまり狩猟者は減っているのに、狩られるべき熊の数はむしろ増えている状況であることが伺えます。
しかも熊の中には人慣れ個体である”アンバーベア”なるものも出没するほどです。
アンバーベアとは、人間を避けるどころか人に慣れて向こうからやってくる厄介な個体のことです。
これは「人間は自分たちを見れば逃げていく」と熊が学習してきた結果だといわれています。
ちなみに余談ですが、なぜ狩猟者が激減しているのかについても軽く触れておきましょう。
実は、日本の多くの野生動物は明治から昭和初期までの乱獲により絶滅の危機に瀕した過去がありました。
今問題になっているツキノワグマもそのうちの1種です。
また1950年代まで森林環境も大きく破壊され、野生動物が生きて行くための場所もなくなっていきました。
そうなると自ずと狩猟者も減って行くというもの。
加えて里山でも変化が起きます。
それは前述したように、過疎化に高齢化です。
もちろん狩猟者自身の高齢化も止まらず、若い人たちの新規加入も減少。
今では、行政から害獣駆除を委託される”猟友会”の存続にも影響が出る始末です。
一方の熊の被害は増加の一途を辿っています。
狩猟者不足は深刻なので、それを補うための存在”ガバメントハンター(公務員ハンター)”なるものが登場することになったそうです。
石原宏高・環境大臣が対策の1つとして、2025年度補正予算を利用したガバメントハンターの早期育成を掲げ、これを各メディアが相次いで報じた
引用元:JBPress 【やさしく解説】過去最悪のクマ被害とハンター不足 対策の切り札として期待される「ガバメントハンター」とは
今ではこの”ガバメントンター”の育成が急務となっているようですが、後継者不足はこんな所でも起きているとは知りませんでした。
熊に遭遇した時の対策は?
次に熊に遭遇してしまった時の対策についてです。
熊が人を襲ってくるのは、熊が己の身を守る為と子供を守る為です。
なので、できれば熊に出会ってしまった時は、刺激を与えないことが自分の身を守る最善の策だといえます。
例えば遠い距離であれば、そのままゆっくり静かに後退りしながら距離をあけるのが良いといわれていますよね。
それで熊がどこかに行ってくれたら1番良いに越したことはありません。
しかしそれはあくまで熊が遠くにいた場合にのみ効果を発揮します。
ではいきなり目の前に熊が現れたらどうでしょうか?
「冷静になり静かに後退り…」なんて考える暇もなく、ほとんどの人が恐怖でパニックになってしまうと思います。
そうなれば熊が襲ってきてしまうわけですが…。
熊が実際に襲ってきた時、どうすれば良いのかについても調べてみました。
リサーチによると、次のような回答があります。
- うつ伏せになり、両手で頭や首付近など急所を守る
- クマ撃退スプレーを至近距離でスプレーする
- 自分の拳を熊の口の中に突っ込む
どういうことなのか、1つずつ解説していきます。

うつ伏せになり、両手で頭や首付近など急所を守る。
熊は人を攻撃する時顔や頭をとにかく狙うそうです。
熊が人の頭や目を狙ってくる理由は、次の通り。
- 熊同士の争いではとにかく相手の口を噛んで窒息させるのが基本的な攻撃方法だから
- 熊は人間の顔を”急所”として認識している可能性がある
- ハンターが銃を構える際に銃が顔の近くにあるため
顔や頭をやられると、人は生きていられません。
熊が襲ってきたら、うつ伏せになり頭や首をとにかく守りましょう。
クマ撃退スプレーを至近距離でスプレーする
熊撃退スプレーも有効であると北米では認識されています。
熊が襲いかかってきたら、できれば至近距離で熊の目をめがけてスプレーしましょう。
この熊撃退スプレーは、唐辛子の辛味成分であるカプサイシンを主成分としています。
熊がこのスプレーを吹きかけられれば強烈な刺激を与えられることになりますので、その効果は絶大といえそうです。
とはいえ、距離が遠すぎると効果が薄れるとのこと。
可能であれば、7m以内の至近距離から吹きかけると良いとされています。

自分の拳を熊の口の中に突っ込む
自分の拳を熊の口の中に突っ込む?
「そんなことできるかよ!」
そんな声が聞こえてきそうですが、実際に噛まれてしまったら人は何が何でもしようとするのではないでしょうか。
当然噛まれないようにするのが最善です!
しかしこの対策は”もし噛まれてしまったらその後どうすべきか?”についてリサーチした結果ですのでご了承ください。
実は、実際に自分の拳を熊の口に突っ込み命が助かった人がいます。
熊は一度頭を噛むと頭蓋骨が砕けるまで離さないのだそうです。
考えただけでも恐ろしいですよね…。
そこで、噛まれた当の本人はどうしたかというと両手で熊の顔を引き剥がし、自分の拳を思い切って熊の口の中に突っ込んだのだとか。
組合長は咄嗟に両手をグーにしてクマの口の中に突っ込みました。それにより、腕は噛まれ傷を追いましたが、徐々にクマの口は開いたままになり閉じられなくなりました。
引用元:クマに襲われた体験談とデータで見る『熊が人を襲うとき』
この勇気ある行動で命拾いしたそうですが、実際自分もできるのか自信はありません。
でも死ぬんだったら最後にはこちらも攻撃して終わりたいですよね。
正直口の中に拳を突っ込むという方法は、万人に効果があるわけではありません。
しかし、これで命が助かった人がいるということだけ心の片隅にでも置いておいて損はないかもしれません。

熊に出会った時にしてはいけない行動は?
熊に出会った時にしてはいけない行動についても触れておきます。
- 走って逃げる
- 大声を出す
- 死んだふりをする
これらのことは熊に出会った時に絶対にしないようにしましょう。
では、その理由について1つずつ解説していきます。
走って逃げる
熊に出会ってしまってNGなこと1つ目が走って逃げることです。
なぜ走って逃げるのが良くないのでしょうか。
実は、熊は逃走する対象を追いかける習性があるといわれています。
なので、もし人が熊に背を向けて逃げ出すと熊は「追いかけなきゃ!」と思ってしまうんですね。
しかも、熊が走ると時速40〜50キロと車並みに速いです。
加えて壁を上り泳ぐのも得意とされています。
つまり、走って逃げるなんてほぼ不可能といっても過言ではないでしょう。
逆に、「人が熊めがけて走って追いかけたらどうなるのか?」
そんな面白い質問をされている人もいました。
その回答ですが、走って追いかけると熊が逃げるのだとか。
それを証拠に実際に犬や猫に追いかけられ退散している熊の動画はいくつもあります。
一方で人が実際に追いかけ逃げて行く動画はないので何とも言えません。
とにかく背を向けて逃げないということだけは覚えておいて良さそうです。
大声を出す
大声を出すと熊が驚き残念ながら”攻撃モード”に切り替わります。
なので熊に出会ったら大声などは出さないようにしましょう。
熊を見ながら気づかれないようゆっくりと後退する事や、静かに語りかけながら後退するなど落ち着いて距離を取ることが大事だそうです。
しかし、もうすでに襲われている場合は別の話。
周りの人に気づかれる為に「助けて〜!」と叫ぶのは許して欲しいところです。
死んだふりをする
一昔前なら、「死んだふりをすれば熊は興味を無くしてどこかに行ってしまう」なんて言われていましたよね。
しかし、この死んだふりは現代では熊対策としてNG行動とされています。
理由は、熊は死んだ動物も餌として食すためです。
死んだふりをすると逆に食べられてしまうので、やめておきましょう。
事前の対策について
熊に出会ってしまったら何をするのかの対策を伝えてきましたが、やはり熊被害に遭わない為には熊に会わないのが1番です。
その為に色々と事前対策をとっておくことも非常に重要になってきます。
例えば、次のような事です。
- 事前に熊の出没情報などを調べておく
- 複数人で行動する
- ラジオや熊鈴笛などを携帯し
- 音を鳴らして自分の存在を知らせる
- 熊撃退スプレーを携帯しておく
- 食料をきちんと管理する
- 建物の出入り口をきちんと施錠、または電気柵を設置する
では、1つずつ解説します。
事前に熊の出没情報などを調べておく
熊が出没する可能性のあるところは事前にチェックしておき、できれば立ち入らないのが良いでしょう。
地図で見る熊被害というサイトがあります。
そういった熊被害についての近況を知れるサイトや口コミなどを調べて、熊の出没情報を押さえておきましょう。
しかし中には「毎年あの山に山登りに行くのが楽しみだったのに」…とがっかりする人もいるかもしれません。
しかし、熊に出くわしてしまって万が一のことがあるよりマシですよね。
どうしても山登りを楽しみたいのであれば、熊が活動的ではない時期(真冬)にずらすなどはした方が良さそうです。
しかし真冬になると今度は雪が大変です。
どうしてもいきたい時は一人ではなく仲間たちとワイワイ行くのも熊避け対策としてはアリだと思います。
複数人で行動する
前述したように、一人ではなく複数名で行動することもくまに出会わない為の対策としてとても有効です。
熊も人に出会いたくて出会っているわけではありません。
熊は基本的に人を避ける習性があるため、人の話し声や足音のする方には近づいてこないでしょう。
また複数名で行動すれば、熊に襲われた時に仲間が助けてくれるかもしれないというメリットもあります。
音を鳴らして自分の存在を知らせる
先ほどの対策と被りますが、熊は人を避ける習性があります。
なので、ラジオや熊笛、鈴など常に音の出るものを携帯し自分の存在をアピールしましょう。
熊撃退スプレーを携帯しておく
熊に出会ってしまい、尚且つ攻撃してきた時に使えるのが熊撃退スプレーです。
前述したように、襲われて素手で対応するより何倍も心強いですよね。
熊スプレーの主成分であるカプサイシンの辛味成分で熊を撃退しましょう。
また、繰り返しになりますが7m以内の至近距離での利用が有効です。
食料をきちんと管理する
熊の嗅覚はとても優れており、食料はもちろん生ゴミの臭いでさえも嗅ぎ分けて近寄ってきます。
しかも、人間の食べ物は熊にとって麻薬のようなもの。
一旦人の食べ物の味を覚えると、人のいる場所に近づくようになり大変危険です。
なので、キャンプなどで生ゴミが出た場合はきちんと袋詰めにして、臭いが出ないようにすること。
そして食料は食糧庫にきちんと保管しておくことが大事です。
また、意外なのが甘い匂いのするリップクリームのようなものも要注意ということだそうです。
建物の出入り口をきちんと施錠/電気柵の設置
実は熊は目が悪く、全てのものが白黒に見えているそうです。
その為、建物の入り口が暗がりに見え自分の洞穴と勘違いして入り込んでしまうのだとか。
時々、スーパーや納屋などありえない場所に熊が入り込んでくるのもそのせいかもしれません。
山が近い場合、建物内に熊が間違って侵入してこないように出入り口はきちんと施錠。
または、電気柵を設置しておいた方が良さそうです。
まとめ
以上、なぜ熊の被害が多いのかについて触れてきましたが熊の生態が少しわかったような気がします。
こんなふうに熊について調べていると、普段生活している場所でいきなり熊が現れたらどうしよう。と心配になります。
しかし、学んだことを思い出し実践するしかありません。
あるいは熊に出会わないように祈るしかありませんね。